銅やアルミ、真鍮などで作られた巨大な魚。その中にいるのは、顔が魚、体が人間という半魚人。スイッチを入れると、小さなモーターが回り出し、半魚人たち がゆっくりペダルを踏んで"魚の羽根"を動かしはじめる......そんな不思議なからくり仕掛けの作品カラクリンを作っているのは、造形作家の井村隆さん。「半魚人の名は、ボンフリーと言います。生まれながらにして自由だからボーンフリー。この骨だけの体のように、風通しの良い生き方が好きなんです」。井村さんは、設計図を書かずに、銅板を叩いたり針金を折り曲げたりしながら、楽しそうにカラクリンを作り上げていきます。「気ままに作っていたら、いつの間にか完成していた、というのが理想ですね」。
今回作ってくれたのは、全長40cm、高さ56cmほどのバナナボート。甲板の前には、望遠鏡を持ったボンフリー。一方、後ろでは、ひとりがバナナの葉の 櫂を漕ぎ、もうひとりは舵を操作しています。マストの両側には、バナナの葉が羽根のように広がって......どうやら、このバナナボートは空も飛べるようです。マストの佇まいは、まさにバナナの木のようで、一番上には立派なバナナの房が誇らしげに輝いています。「昔からバナナやマンゴー、ヤシのようなトロピカルなものに興味があるんですよ。パイナップルもそうだけど、何となく不自然で面白いでしょう、実のなり方が。
でも、不自然なものは造形しにくいし、ましてや金属を使って表現するのは難しいから、こんなふうにトロピカルなテーマに挑戦するのは、まったく初めての経験。そのわりに、うまくいったんちゃうかな(笑)」